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「ミルハスで新しい響きつくりたい」 チェロ奏者・笹沼樹さん 7月8日、スロヴァキア・フィルと共演

2023.06.27

 7月8日(土)にミルハス大ホールで開かれる第2回秋田・潟上国際音楽祭スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団公演に出演するチェロ奏者の笹沼樹(たつき)さんが公演に向けミルハスの質問に答えた。日本での公演を前にスロヴァキアで同楽団と初共演し(6月8、9日=現地時間)、さらに意欲を高めているようだ。

―初共演はどんな経験だったか。

 スロヴァキア・フィルのサウンドの第一印象は「温かみを感じさせる特別な音。きっとドヴォルザークに合う」というものだった。リハーサルで一緒に弾き始め、その直感が正しいと確認できた。本番では演奏のエネルギーが一段と高まり、うれしい驚きだった。

 公演初日の演奏中に会場の警報器が誤作動するアクシデントがあり、演奏を最初からやり直すことになったが、そのことでかえって団員の皆さんと連帯感が強まったと感じられた。こうした良い関係で日本での公演に臨めるのがとてもうれしい。

―日本での共演をどのようなものにしたいか。

 スロヴァキア・フィルは、日本のオーケストラとは全く異なるテイストを持っている。団員は主にスロヴァキア人やチェコ人。彼らがそこで育ち今に至る生活のさまざまな要素から生まれてくる音だ。日本でそれを聴けるのはとても貴重なこと。僕はそういう団員の皆さんと、仲間としてアンサンブルを楽しむことを一番大切に演奏したいと思っている。

―これまで秋田で演奏する機会はあったか。

 今回が初めてになる。とても楽しみだ。3月に秋田市を訪れたとき、いろいろなものが集約された素敵な街だと感じた。劇場も美術館も、テレビ局やラジオ局や新聞社も官庁も、わりと徒歩圏内に集まり、おいしいものを提供する飲食店も多くあって、文化を発信したり、文化に興味を持ったりしている皆さんにとって住みやすい街なのではないかと感じた。風景も空気もきれいで、僕の楽器も喜ぶのではないか。

―ミルハスという真新しい劇場での公演。楽しみに思うことは?

 演奏された回数が少ないということは、これからホールで演奏する演奏家たちとお客様が一緒にホールの響きをつくっていくということ。チェロの場合、老舗のホールの床にはこれまで演奏してきたチェリストたちがエンドピン(チェロを支える芯)を刺した痕がたくさん残っていて、僕たちはそれを参考に「響きの位置」を探っていく。しかし、新しいホールでは自分たちでそれを探し、開拓していくことになる。ミルハスは素晴らしい響きのホールだと聞いている。そこで新しい響きをつくっていけることがとても楽しみだ。

【笹沼樹・プロフィール】東京都出身。7歳でチェロを習い始め、桐朋学園大学大学院などを経てパリのエコールノルマル音楽院に在籍。パリと東京の2拠点で活動している。2019年、デビューCD「親愛の言葉」(日本コロムビア)をリリース。東京交響楽団客演首席奏者。

笹沼樹さん(©Taira Tairadate)