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「出演者のエネルギーをすべて出す」 振付家・新海絵理子さんインタビュー

2022.08.01

 県民・市民参加型ミュージカル「欅の記憶・蓮のトキメキ」(2023年1月14、15日、中ホール)のダンス練習が本格化した。振付担当の新海絵理子さん=東京=が7月末から1カ月間、週末ごとに秋田市を訪れ集中的に指導に当たっている。新海さんに作品にかける思い、指導法などについて聞いた。

 ―これまで数多くのミュージカル、音楽劇の振付を担当してきたが、指導するうえで大切にしていることは。
 新海 演出意図、作品、音楽を、私なりの感性で読み込み、その作品全体、あるいは場面場面で何を表現したいのかをイメージし、体現していくのが振り付けです。演出家のイメージがより膨らむような振り付けとなるようにいつも考えています。演出家から方向性が違うなどの指摘を受けたことはありませんが、そぐわないものを作るのはプロとして失格だと思っています。

 ―今回担当する「欅の記憶・蓮のトキメキ」はどんな作品にしたいか。
 新海 7月30日に秋田市に来ましたが、千秋公園のお堀に見事な蓮の花が咲いていて、心を奪われました。秋田の人たちは蓮の花に癒やされていると実感するとともに、とても大切にしていることがわかりました。
 ミュージカルはミルハスの開館記念とともに、秋田の人たちを元気にすることが目的の一つと聞いています。脚本も素敵で、芝居、音楽、ダンスが大好きな人たちが集まってくれました。経験者もいれば、初心者もいますが、みんな苦痛と考えずに楽しんでほしいです。
 ダンスの振り付けは「もう少し練習すればできるようになる」というところを目指しています。慣れないことを一生懸命やる。努力や向上心が必要です。「頑張った」という出演者全員のエネルギーがお客様に訴えるはずです。「初心者もいるからこの程度だよね」と思われるような作品には絶対にしたくないです。

 ―ミュージカルの魅力は。
 新海 感情の起伏、伝え足りないところを音楽が語ってくれます。音楽なくしてミュージカルは語れません。また、ミュージカル未経験者のプロの俳優さんがミュージカル、音楽劇に出演すると「共に歌って踊ったりすることで一体感が生まれる。心を動かされる」とよく口にします。観る側も作り手側にもそんなエネルギーがミュージカルにはあるのです。

 ―プロもアマチュアも指導しているが、その違いは。
 新海 プロはオーディションを経て出演が決まります。歌やダンスのレベルも高く、練習初日から与えられた振り付けができて当たり前の世界です。稽古を通じて、役のキャラクターをより魅力的にして、そしてシーンを構築すること、それがキャスト、出演者の役目で初日に向かってさらに高みを目指していきます。
 一方、アマチュアは、一生懸命やれば絶対にできるから、頑張っていこうというのが出発点です。出演者みんながより輝くように指導しています。

 ―「欅の記憶・蓮のトキメキ」の出演者たちを指導した感想は。
 新海 出演者のエネルギーをすべて出してもらうのが私の仕事です。みんな前向きで本当によく頑張っています。練習は大変ですが、楽しんでもらっているし、本番に向けていい方向に進んでいると確信しています。出演者が助け合いながら練習しているのが手に取るようにわかります。素敵なことだと思います。

 ―本番に向けて、出演者にメッセージを。
 新海 出演者は練習したことをとにかく、ひたすら繰り返し、自分のものにしていくしかありません。間違えて覚えたら大変なので、疑問に思ったことがあったら、わかる人に素直に聞いてほしいです。
 日常生活で全身を鏡で見ることはあまりないと思いますが、できる限り鏡の前に立ち、自分の姿を見てほしいです。そうすればいいところも、悪いところも見えてきます。きっとポーズの取り方も変わってくるはずです。

 ―鑑賞を希望している県民にメッセージを。
 新海 一般の県民が出演するミュージカルでもあり、秋田の元気にきっとつながるはずです。観客席にいる皆さんもいつかは自分が、あるいは自分の家族が同じ舞台に立ちたいと思ってもらえればうれしいです。

 しんかい えりこ 東京都新宿区生まれ。振付家。城西国際大兼任講師、舞台芸術学院講師。「ジャージーボーイズ」や「ピーターパン」などミュージカルやオペラ等々数多くの作品の振り付けを手掛ける。「ザ・ビューティフルゲーム」の振り付けにより第22回読売演劇大賞優秀スタッフ賞受賞。東京都豊島区住。