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Kバレエ・オプト最新作「踊る。遠野物語」 バレエと舞踏が織りなす、摩訶不思議な世界 ミルハスで来年1月12日上演 

2025.06.10

 あきた芸術劇場ミルハスで来年1月12日に上演されるKバレエ・オプト最新作について、BunkamuraとK-BALLETは本日10日、詳細情報をついに解禁した。作品タイトルは『踊る。遠野物語』。日本民俗学の祖・柳田國男が岩手県遠野地方の伝承を聞き書きした『遠野物語』がテーマだ。バレエと舞踏が融合する今までにないダンス作品として、観客に驚きと感動を届ける。熊川哲也率いる日本屈指のバレエ団「Kバレエ トウキョウ」が初めて秋田で見られる絶好の機会でもある。

『踊る。遠野物語』キーヴィジュアル(イラスト:森洋子 写真:渡邉肇)

 特攻隊員の青年を主人公に据えたストーリー仕立てで展開する。青年の乗った戦闘機が遠野の地に落ち、青年は謎の少年に導かれながら遠野をさまよう。この世とあの世が交差する幻影の地で、青年は愛しい許嫁の面影を追う。劇中では雪女や座敷わらし、オシラサマなど、遠野物語でおなじみの「異形の者」たちが次々に登場する。

 主人公の特攻隊員を演じるのはKバレエのプリンシパル石橋奨也。長身を生かした伸びやかな踊りと深い表現力が持ち味で、内面からにじみ出る繊細な感情表現で観客を引き込む。許嫁役はKバレエのソリスト大久保沙耶。透明感あふれる優美な舞姿が魅力で、古典からコンテンポラリーまで幅広く踊りこなす。このほか、Kバレエの実力派ダンサーたちが多数出演する。

『踊る。遠野物語』の演出と振付を手掛ける森山。自らも「河童」役で出演する(ミルハス撮影)

 Kバレエと共演する舞踏家陣も豪華だ。秋田が生んだ舞踏創始者・土方巽の弟子として知られる麿赤兒をはじめ、麿が率いる舞踏カンパニー「大駱駝艦」のメンバー、そのほか複数のダンサーたちが魂の踊りを見せる。

 演出と振付を手掛けるのは、舞踊家でもある森山開次。宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」を主題とした創作舞など、自ら演出・振付・出演する作品を数々発表している。日本ならではのモチーフを独自の美学で表現した作品は国内外から高く評価されており、東京2020パラリンピック開会式では演出とチーフ振付を担当した。今作では自らも「河童」役で踊る。

 8月から本格的な稽古が始まるのを前に、5月下旬、森山と麿の2人に都内で話を聞いた。森山は「踊り手一人一人異なる身体の感性を持っているはず」と話し、稽古をしながら徐々に振付を完成させていくという。「遠野物語の逸話の中の、言葉では説明できないようなさまざまな体験を実感として観客に届けること。踊りはそれができる力を持っていると思うので、『感じる身体』というのを作品の中で伝えていきたい」と語った。

出演に向けた意気込みを語る麿。自らが率いる「大駱駝艦」も踊り手に加わる(ミルハス撮影)

 麿は、舞踏家として世界にその名を轟かせ、いまなおその第一線を走る82歳。「もうこんな舞台に立てるのは最後かもしれないからね」と笑う顔には重鎮の風格がにじむ。今作について「何がリアルで何が幻想なのか、そのはざまの不思議な世界をどこまで表現できるか。遠野という広がりのある主題の中で、ある意味なんでもできる」と意気込んだ。

 「時代性のある新作」をコンセプトとするKバレエ・オプトの第4作目となる「踊る。遠野物語」。舞台を通じてどんな新しい体験とメッセージを届けてくれるのか、上演の時を楽しみに待ちたい。(ミルハス企画事業・広報課)

 ※森山開次さんと麿赤兒さんのインタビューの内容は7月初旬発行の「ミルハス・タイムズ」で詳しく紹介します。 

 ▶公演ページはこちら→https://akiat.jp/events/11345/