Blog

【スタッフブログ】「劇場へ行こう」#038 1988年 陽のあたる場所

2023.05.13

 1988年―。皆さんは何歳で、どこで何をしていただろう。

 小欄は27歳。まだ駆け出しの新聞記者だった。文化部の医療担当。毎日毎日、医師に会い、話を聞いて、原稿を書いていた。文系記者にとっては苦労の連続だったが、医療という未知の分野への取材は興味深いものであった。

 

 世の中に目を向ければ、時の首相は竹下登氏、青函トンネルが開通、東京ドームがオープンしたほか、リクルート事件が発覚、映画「となりのトトロ」が公開された。昭和天皇の病状が重くなり、昭和という時代が終焉に向かって行った年であった。

 あれから35年。1988年8月に5万5千人静岡県浜名湖畔で開かれた浜田省吾さんの「A PLACE IN THE SUN at 渚園」のライブ映像が全国の映画館で公開されている。

 映像の中で躍動する浜田さん、バッキングバンドのメンバーも若い。残念ながらこのライブへの参加はかなわなかった。だが、当時の映像を目にし、楽曲を耳にしたことで、一瞬にして“あの日、あの時”に戻った。

 あの時、こんなことをしていた、こんな失敗をしたと思い出すとともに、怖いものなんか何にもなかったと若さゆえの特権を享受していた日々でもあった。

 そして一つずつ学びながら、また失敗を繰り返しながら、齢を重ねてきた。映画の上映中は、自らの歩いてきた道を振り返る時間でもあった。何かを成し遂げたと胸を張れるようなことはない。平凡ながらも前を向いて進んできたと思う。

 

 何かをきっかけにして、人生を振り返ることがある。それは映画であったり、音楽であったり、小説であったり、人それぞれであろう。浜田さんの映画、音楽はまさにそのきっかけを与えてくれた。映画館内ではすすり泣いている観客もいた。自らのこれまで、そしてこれからに思いをはせていたのではないだろうか。

 浜田さんは現在、70歳。いまも精力的にライブを展開している。この秋からのアリーナツアーも決まっている。浜田さんのツアータイトルはずっと「ON THE ROAD」。これに開催年が加わる。同名の楽曲もある。日本語にすれば「旅の途上」という意味であろう。映画を見てあらためてこのタイトルの思いが伝わってきた。

 本県で浜田さんのコンサートは2007年以来開かれていない。今年のツアースケジュールにも入っていない。浜田さんは楽曲「ON THE ROAD」で歌う。「この道の彼方 約束されたはずの場所があると信じて行きたい」―。来年こそはミルハスがその舞台となる日があると信じたい。