「祖父は秋田の大館市出身で、祖母は山形出身。2人は恋に落ち、北海道に渡った。札幌でパン屋を開き、そこの孫娘が私。だからは私のルーツは秋田」
こう話したのは歌手の大黒摩季さん。大黒さんのライブが2月25日、あきた芸術劇場ミルハス大ホールで開かれた。デビュー30周年の全国ツアーの一環。30年の軌跡をたどるように、ヒットナンバーが並び、伸びのある高音と独特のハスキーボイスで観客を魅了した。観客の年齢層も大黒さんのキャリアを反映して10代から70、80代までと幅広く、まさに30周年を大黒さん、バンドメンバー、そして観客全員で祝うパーティーのようなライブだった。
「我が家の正月はきりたんぽ、いぶりがっこももちろんある」と話したほか、長く秋田犬を飼っていて、祖父とともによく散歩したと思い出を語ってくれた。
「秋田最高!」と何度もアピールしてくれた大黒さん。特別な思いを込めて、見せてくれたパフォーマンスは、県民の一人として誇らしささえ感じられるライブだった。
大黒さんはライブの終盤、「(天国の)おじいちゃんも褒めてくれるかな」とつぶやくように、祈るように話した。その歌はミルハスの大ホールからおじいさまにきっと届いたに違いないと信じている。
30周年は通過点であろう。これからもミルハスで素晴らしい歌声を響かせてほしい。「ルーツ秋田」のファンは特別な思いで待っています。
◇ ◇ ◇
新型コロナの感染拡大で、声を出しての応援は長らく禁止されていた。しかし、感染が落ち着いてきたこともあり、今回のライブは不織布マスク着用での「声出しOK」となった。アンコールを待つ間、「摩季ちゃん」「ヘイ!」と客席から声援が飛んだ。会場の一体感が醸成され、やはりライブはこうあるべきだと実感した。