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【スタッフブログ】「劇場へ行こう」#032 アナログですが何か

2023.01.18

「デジタルの時計を見ると、頭の中で針の角度を、もう1回アナログで」「翻訳するわけね」「あとどのくらいあるなって」―。作家の向田邦子さんと吉行淳之助さんとの対談の一部である。

 この対談を読んだのはずいぶん前だが、「その通り」と思わず膝を叩いたのを覚えている。今もって残り時間を計算するときなどは、頭の中に針のあるアナログ時計を想像している。

 あきた芸術劇場ミルハスではプロモーターからの依頼があれば、公演のチケットを事務室窓口で販売している。チケットはコンビニエンスストアなどでのオンライン販売が主流になっているが、それでもわざわざミルハスの窓口に来て、チケットを求める人は少なくない。

 高齢者が多いが、曰く「そもそもコンビニの機械を操作できない」「オンラインだと席を選べない」。そんな人たちがミルハスの昔ながらの自分で席を選べる”手売り“販売を求めてやって来るのである。

 特に演歌の公演チケットを求める人が目立つ。これまで午前零時から並んだ熱烈なファンもいたほど。完売となった福田こうへいさん(3月25日、大ホール)のチケット販売時には、午前10時のスタートに、午前6時過ぎから行列ができたほど。一人ずつ希望する席を選びながらの販売となり、ミルハス分のチケット200枚以上を販売するのに2時間ほどを要した。随分と待った人もいたが、チケットを手にした人たちは笑顔に満ちていた。

 便利な時代になったとはいえ、やはりアナログは決して消え去るものではない。特に高齢化が顕著な本県において、昔ながらのチケットの手売り販売もその一つであろう。そこに必要だという人がいる限り、続けていかなければならない。